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地域熱供給・コジェネのプレプランニングと研修

村上敦ブログ

 

ドイツ・フライブルク市から地球環境を考える

http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/

お知らせ

2017年

8月

13日

電力需給実績の見える化について

皆さんは、「電力会社」「情報公開」と聞いて、どんな印象をお持ちでしょうか? 情報隠蔽? 資料請求に対する黒塗りの資料?

 

私の住むドイツの発電所を運営してる事業者は、電力取引市場の公正を担保するために、前日までには自身の発電所の発電計画を市場参加者に透明性高く報告しなければなりません。また、取引市場では、翌日の太陽光発電、風力発電の予測状況を公開することで、市場取引参加者に共通の透明性高い情報公開を担保し、インサイダー取引など公正取引を阻害する事柄を取り除く努力がなされています。

 

同時に、計画に対して、実質の発電状況もリアルタイムで公開されています。そんな各種の情報から、例えばソーラーエネルギーシステム研究では欧州最大規模のフラウンホーファー研究所ISE(ソーラーエネルギーシステム研究所)、あるいはドイツで最大規模のエネルギーシフトに関するシンクタンク、アゴラエネルギーヴェンデなどが、一般市民に向けて、広く、見やすい情報提供をすることで、電力事業にかかわる情報の公開の一翼を担っています。

 

エネジーチャート:

https://www.energy-charts.de/power.htm?source=all-sources&week=32&year=2017

 

アゴラメーター:

https://www.agora-energiewende.de/en/topics/-agothem-/Produkt/produkt/76/Agorameter/

 

皆さんは、そんなドイツの情報を耳にすると、それに引き換え日本ではまったく電力の情報公開が行われていない、「けしからん!」と思ってはいないでしょうか?

 

はい、もちろん、ドイツのように日本ではリアルタイムの情報や各種の発電所一つ一つの情報については、まだ情報公開されていません。したがって、その批判は一方では当たっています。

 

しかし、他方では、すでに201641日から、すべての一般電気事業者(大手電力10社)においては、四半期ごとに(公表は数か月遅れですが…)、1時間ごとの各種の発電源の発電状況、揚水水力の使用状況、あるいは系統連携の使用状況などを情報公開する義務が課され、そのデータについてはネット上に公開されるようになっているんです。つまり、皆さんの手に届く範囲で、これまで歴史上入手不可能だった情報が、すでに十分に手に入るようになっているんですね。

 

ただし、残念ながら、この情報は単なる数字の羅列として公表されており、なかなか普通の人では理解できない状況が続けられていました。私個人としては、20173月に至るまで、そのうち再エネのステークホルダーや経産省、あるいは環境省などが見える化をするようになるに違いない、と考えていました。しかし、この春になっても、すでに201641日から2017331日までの1年分の情報が公開されるようになっても、「見える化」は行われることがありませんでした。

 

したがって、私たちは、建物の燃費性能の「見える化」では、すでに実績がある「一社日本エネルギーパス協会」と提携し、同時に、この事業のスポンサーとして、建物のエネルギー性能を見える化することでうまく他社と自身の建築の省エネ性能の差別化をしている「㈱ウェルネストホーム」に依頼をする形で、日本ではじめてと自負している電力の見える化を実現することが可能となりました。

 

https://wellnesthome.jp/energy/

 

本当にこの見える化ツール、優れものなので、皆さん、是非、このリンクをシェア、転送、コピーして世の中に広めてあげてください!

 

例えば、日本では20164月から20173月までの1年間においては、電力需要に対して、系統に流れ込んだ再エネ(自家消費分と揚水水力は含まない、水力、地熱、バイオマス、太陽光、風力の合計)は、13.8%になっています。多いと思いますか? それとも少ない?

 

数年前までは日本の発電では、水力9%とその他の再エネ2%程度の合計でおよそ11%だったのですが、20177月の今の時点では再エネの割合は16%程度まで成長しています(2017年の予測値、自家消費分なども含む)。過去5年間で5%も上昇しているわけですから、政府が2030年に目標としている2224%(あと68%の上昇)という目標は、低いような気がしませんか?

 

しかし、上記の見える化のツールを使って、201654日の九州電力の電力需給状況を確認してみてください。この日は、GWによって会社はお休み。電力の需要が低いタイミングで快晴だったので、午前11時には太陽光発電だけで61%以上の電力を発電するようになっていますし、その他の再エネを合計すると77%程度にまで発電するようになっています。九州電力では20164月から20173月までの1年間における太陽光発電の発電量割合は8.2%に過ぎませんが、瞬間的には61%を、もし20175月のデータが公表されてきたなら、それ以上の出力を発電するようなタイミングもできてしまうわけです。

 

九州電力はこうした状況に対して、太陽光発電の出力抑制をかけると公表しています。

http://www.kyuden.co.jp/press_h160721-1.html

 

そういった状況であれば、変動性再エネといわれる太陽光発電、風力発電はこれ以上必要ないのでしょうか? それとも、再エネを入れにくくしている一定出力で発電を続けるのみの柔軟性のない原子力発電や、最近申請や建設がラッシュの木質バイオマス発電が必要ないのでしょうか?

 

これらについては、回答をここで急いで出すつもりはありません。このテーマについては、国民的な議論が必要になるのです。

 

そんなきっかけになるべく、情報の見える化を整備しましたので、それぞれの電力事業者において、それぞれの時間帯、日時において、発電状況がどうなのか、電池といわれる揚水水力発電の使用状況はどうなのか、他社との系統連携がどうなのか、つぶさに観察してみてください。そして皆さんの周りの方と議論してみてください。

 

 

その先には、きっと、将来のエネルギーMIX、電源MIXについて、これまでよりも、より一段高いところからの「意見」が待っているはずです。

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2017年

8月

12日

ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか

 

ブログでお伝えすることが遅れましたが、エネルギーと同じようなコンセプトで(kWh=¥)、都市計画、交通を違う方向に整備するために舵を切り、地域経済を活性化させることはできないか模索した本(km=¥)を記しました。

 

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ドイツの都市計画の基礎の基礎「ショートウェイシティ」について説明し、そして交通対策でまちを活性化する方策について論じています。

まちを活かすには、日本でのコンパクトシティ、立地適正化計画のような面=線引きでの取り組みではなく(もちろん大型商業施設の再開発でもなく)、ドイツのように面を意識した上で個々の建物ごとのミクロでの取り組みを積み上げて行く必要があります。

 

この本で試みたことは、都市計画の方針と交通政策について、これまでのまちづくり本にはない切り口で、とりわけ小規模都市、人口少数の農村も念頭においたことです。また、ウーバーX的なるもの、完全自動運転車など新しいテーマについての論考も含めています。

 

最終的なタイトルは出版社が会議で決めたわけですが、私個人的に内容的に即したタイトルをつけるなら、

『ドイツにはコンパクトシティという言葉すらないのに、なぜまちがコンパクトにまとまり、活気があるのか? ~交通から考えるドイツのショートウェイシティ、移動距離の短いまち ~交通手段を変更して、地域において経済的な付加価値の創造を行う、すなわちkm=¥のコンセプトとは!』

というものです。

もしよろしければ、お読みいただけると幸いです!

 

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2017年

8月

11日

日本で持続的に利用可能な木質バイオマスの量は?

日本ではFITにおけるメガソーラーブームがそろそろひと段落という感じになってきましたが、木質バイオマス発電については、なかなか目を見張るものがあります。いや、ネガティブな意味で…

http://www.mori-energy.jp/hatsuden1.html

 

こんなに大量に、木で発電するという馬鹿なことをやっていると、いよいよ治山という意味で恐ろしい時代がやってくるなと危惧していますが、やっている関係者は良いことをやっていると思い込んでいるところに、日本の木質バイオマス発電のゆがんだところが凝縮されているんだと思います。

 

その「良いことをやっている」という思い込み(妄想)の根拠はおおよそ次の2点になります:

 

1.地域産材(とりわけ未利用材)を主体として利用することにしているプロジェクトでは、木質バイオマス発電をすることで、燃料を供給するチェーンを展開することで、①地域の放置されている森に手を入れ、間伐などの作業を進め、②地域に雇用場所を作り、③過疎の山村部の活性化をもたらす、環境にも良いし、みたいな感じの妄想です。

 

それぞれ、

1m360009000円のB級材を産出するためにすら、1m340006000円の低質材を産出するためにすら手が入れられなかった森に、なぜ、1m33000円前後であるべきのカスケード利用の最下端であるはずの木質チップを生産することで、森に手が入るのか? そんなゴミを拾いに行くために日本の道なき、急峻な山に入っていって、森に必要とされている気の利いた形で手が入り、整備されることなんて妄想でしかありません。木質バイオマス発電によって、間伐などの手が入るようになるわけでは100%なく、単に助成措置が別でついているから(木質バイオマス発電などなくとも)、間伐されているだけです。結局は、コストとの兼ね合いで、皆伐される山も大量に出てくるでしょうし、その費用対効果は、時間経過とともに(最初は有利なところからチップを集めてくるので)悪化し、時間経過とともに、山がより荒らされることになります。

 

②、③こうした現状を無視した妄想で実施した木質バイオマス発電は、需給バランスが崩れ、チップの価格が高騰したときに、事業者として即刻破たんさせるべきなんですが、往々にして、地域に利益があるという口車で、追加で助成措置などが入ったり(それをやるなら、FITなど適用させるべきではないでしょう)、あるいは自治体や県の税金からの資本を投入して三セクなどの形態で行うため、ある程度の高額でも発電を続けてゆくことになります。すると、木材のカスケード利用の川上(合板、製紙、製材など)における需要とが被ることになり、材は高騰し、健全に経営していたはずのそうした雇用効果の高い木材チェーン産業の雇用が失われる可能性を飛躍的に高めます。そもそもバイオマス発電単体では、発電所などでほとんど雇用を生み出しませんし、とりわけ、その施設が地域資本ではなく、地域外から(東京など)資本を持ち込んだものであると(設備・プランとも輸入とか、別地域で作られたものであると)、域内GDPは逆に減少することにもなりかねません。ということで、上記のサイトで示されたような無数のプロジェクトが、その半分でも実現してしまうと、地域から雇用を減らし、地域の活性度を奪ってしまう結果になります。

 

2.外材(とりわけチップ輸入、やしがら輸入など)を主体として利用することにしているプロジェクトでは、④再生可能エネルギーを推進しているのだから、地球温暖化の対策にもなり、地球環境に貢献する、というような感じの妄想を持っています。

 

ただし、そもそもFITの賦課金負担によって、国民がお金を出すことが正当かの判断を問われることになりますし(FITを適用しないのなら、勝手にやれば良いのですが)、④については、再エネの一つである木質(混燃)バイオマス発電をすることでも、その輸入する材料を出荷する国での環境保護、自然保護のスタンダードは、日本のそれよりも格段に低いケースがほとんどで、現地での乱伐、汚染の排出などを伴います。同時に、EUで行われた多くのバイオマス燃料に関するLCA調査でも明らかなように、そうした輸入バイオマスは、(とりわけ森林などの土地消費と汚染排出によって)化石燃料よりもLCAバランスが悪いということが往々にして起こりますし、日本には、EUにあるようなそれが本当に意味のあるバイオマスなのかどうかを認証するシステムも義務化されていません。

 

ということで、最悪の木質バイオマス発電ですが、上記のことをお話した上でも、それでも、自分の地域だけは、入念に地域における需要量と供給量を計算しているから大丈夫だとうそぶく方々が沢山います。というか、大多数はそう。

 

で、ここでの大きな問題点なのですが、①もし、近隣の自治体や県で同じような真似をするプロジェクトが後で出てくるなら、マスタープランなどで調整しているわけではないので、その目論みは完全に破たんすること、②そうした方々は、地域で供給できる木質バイオマス(チップ)の量を、地域にある森林面積やその蓄積から推計して計算していることがほとんどであることです。

 

いや、そういうポテンシャルからの計算(とらぬ狸の皮算用)は、材料をわざわざ運び出す必要のない太陽光発電や風力発電の場合は有効ですが、木質バイオマスの場合は意味がありません!

 

これでやったことで、ドイツでも、オーストリア(ウィーンやギュッシングなんか本当に死んでいます)でも手痛い失敗を過去にしたわけです。

 

例えば、食品廃棄物を原料にバイオガス発電を計画する場合、あるエリアの人口と可処分所得から、食品購入や外食に使える総額を割り出し、それを食材量に変換し、そのうちのロス率を推計することでポテンシャルを導き、施設を建設する人なんかいるはずもないことは自明です。

 

基本的には、地域で「すでに処分」されている食品廃棄物の量から、それをどれだけ自身の発電に回せるのか営業し、あたりを付けたうえでプロジェクトを開始するのが普通です。でも、この普通が、木質バイオマスになると(太陽光や風力のポテンシャルの意味とごっちゃにして)いきなり消滅するのが怖いところです。

 

木質バイオマス発電を計画できるのは、地域において、「すでに存在する」木材チェーン産業から、「すでに現状で」どれだけの廃棄物(カスケード利用の最下端なんだから当たり前ですよね)が無駄に処分されているのか調査し、実際に営業してあたりをつけて、計画するべきなんですが、こうした形で計画されているところは皆無です(でなければ、上記で紹介したリンク先のように大量の発電所が計画されるわけがない!)。

 

ということで、日本で今のところ、持続可能に産業として利用できる木質バイオマスの総量について、ざっと検討してみましょう。

 

基本的には、発電用の燃料として理性的に利用できる量は、最大でも国産材の製材量の1020%程度が良いところでしょう。

 

統計を見ると木材の年間の日本国内の総需要量は7500m3、国内生産量は2500m3、輸入量は5000m3という感じです。

http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kikaku/150929.html

http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/mokuzai_zyukyu/index.html

 

その国内の2500m3のうち、製材としては1500m3程度です。これが製材された際に、歩留まりではじかれた分のカスケードの最下端と仮定すると、使えてもせいぜい1020%が良いところでしょう。とするなら、年間150300m3程度が(そして建築取り壊しなどで出てくる廃棄物としての廃材を加えたものが)、持続可能な産業としての木質バイオマスの利用可能になります(これでも多すぎかもしれませんが)。

 

ただし、廃棄物の廃材については、すでに日本ではセメントや製鉄などの分野で、石炭に混燃させる取り組みが90年代から行われ、需要のほうが供給を上回る感じだったわけですから、純粋にFITで進めて良いのは、全国で例えば5MW出力(年間チップ消費量10m3)の木質バイオマスの発電所であれば、最大でも15基程度で終了です。

 

ということで、発電出力であれば、「現状!」の日本の川上の森林産業の力量であると、最大でも75MW発電出力分、つまり8760時間×設備利用率80%≒5kWh程度でしょう。これは、国内の総発電量10,000kWh0.05%に該当するのみです。

 

これ以上の発電量を期待するならば、

 

1.禿山が増加する(そして、その植林コストは税金ですし、災害が発生したら税金で補償するわけです)

 

2.合板や製紙など、他の低級材を取り扱う産業構造が目茶目茶になる(材料の取り合いでチップが高騰し)、雇用が失われる、地域がより貧しくなる

 

3.外材に頼るなら日本よりも自然保護関連の法整備が緩い国々で悪影響(乱伐・汚染)を出しながら、大部分は原油を輸入するよりも悪いLCAで、チップやヤシガラを輸入する

 

4.本来は製材用として使われる予定だったB級材(日本の短寿命の家でも30年間使用され、炭素を固定)までが、瞬時に燃やされて終了のチップとなってしまう

 

という事柄が発生することは、子どもでも容易に想像できます。

 

で、今の日本では、これら4つすべてがすでに同時進行で進んでいるところなので、それでもやる方々を、私は放火魔と呼んでいます。

 

 

もちろん、今後の話をすれば、

 

1.日本の山々に2030年間投資をし続け、森林路網が整備され、

 

2.最終林形を定めた後(できる限りの大径材、高級材という付加価値を山で作りだす!)、皆伐に頼らない複層林、恒続林という形で、

 

3.高い職業訓練と厳しい安全教育を専門の学校でしっかりと受け、最新の防護設備、機械設備など適材適所で駆使して、多くの山々がプロの手によって整備され、

 

4.製材所や森林組合は、安易なエネルギー供給で将来を潰すような真似をせず、地道な営業努力と商品開発、市場開拓を続け、木材チェーンを盛り上げ、

 

5.それぞれの川上の木材チェーンの生産性が高まることで、品質、価格ともに外材を上回るようになり、

 

6.国内の木材需要である7500m3をほとんどすべて国内で処理するばかりか、場合によっては相当量を輸出にも回せるようになるなら、

 

7.国内で産業として消費しても良い木質バイオマスの総量は上記の10倍の15003000m35MW発電出力の木質バイオマス発電所が150基程度(国内の発電量の0.5%程度)にまでは上昇させることも、3040年かけると、持続的に可能になるはずです。

 

ただし、上記の順序ではなく、いきなりカスケード利用の最下端の燃料利用として、森の木を燃やし始めている日本では、(せっかく戦後の拡大植林したものが育って、いよいよ何かの手を打てるようになったばかりの状況なのに)これらが叶えられるわけはないことも、子どもに対してであっても説明すると理解してくれます。

 

まあ、頭の中がカネばかりの人たちには、また、給料分の仕事をしていないのに、給料を得ている老害たちが沢山の日本の山間部の多くでは、こんなこと書いてみてもほとんど意味がないのでしょうが…

 

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2017年

8月

10日

ドイツMV州・風力発電事業に住民の資本参加を義務付ける法について

ドイツで再生可能エネルギーの推進、およびエネルギーシフトに対して、国民の受容度が高いのは、

 

基本的には地域の市民出資による市民エネルギー組合だとか、合資会社だとかで、風力発電や太陽光発電などのプロジェクトを、その地域に住んでいる住民自体が推進しているケースが、

 

日本と比較して、飛躍的に多いという理由もあります。

 

 

日本でも、ドイツでもポテンシャルの高い太陽光や風力による発電は、従来型の化石燃料などと比較してエネルギー密度の低いエネルギーを利用することから、それを収穫して、ある一定量の規模で使おうとすると、これまで海岸沿いにポツン、ポツンと設置してあった火力・原子力発電所が必要とした土地消費量をはるかに上回る土地が、全国に面状に必要になるという性格を持っています。

 

ということで、ピンポイントでの地元対策だけではなく、全国面状に再エネの推進に対する市民、国民の受容度を高めないことには、大きな規模での進展はありえません(もちろん、民主主義的にやらないなら、何でもありなんですが)。

 

ということで、一部の事業者(往々にして、大都市部に立地する大企業や裕福層)だけが、FITによる(再エネ設備設置による)利益を享受し、FITの賦課金は国民が横並びで負担し、同時に全国津々浦々再エネ設備の負の影響(土地消費、景観の変化、騒音、自然破壊など)を国民が受けるようになると、どこかの段階で「再エネの推進=悪」という社会正義が出来上がってしまうことになります。

 

そうした意味では、今の日本はこれ以上想定できないほど最悪の路線を一直線で進んでいるように見受けられますし、ドイツはそうならない道を常に(妥協しながらも市民の抵抗で)選択して、進んできたように観察できます。

 

その王道が、再エネ設備が立地する場所の地域住民が、その再エネ設備に投資し、利益を享受することで、受容度を高めるという取り組みです。

 

 

とはいえ、こうした市民出資、市民組合による大規模・営利プロジェクトという経営精神と強い自助精神を必要とする取り組みは、ドイツのどの地域でも、同じ強さで行われているわけではなく、とりわけ南部では強いですが、旧東ドイツや北ドイツでは弱いという傾向があります。

 

ということで、政治的に、今まで以上に市民による投資参加を促したいメクレンブルク・フォアポメルン州(MV州)では、ドイツでははじめてとなる以下のような法律を施行しています(チューリンゲン州でも検討中、デンマークがお手本)。

http://www.landesrecht-mv.de/jportal/portal/page/bsmvprod.psml?showdoccase=1&st=lr&doc.id=jlr-WindPB%C3%BCGemBGMVrahmen&doc.part=X&doc.origin=bs

 

この法律は「ウィンドパークへの自治体・市民参加法」と名付けられ、20165月末から施行されました。

 

具体的には、この州内で風力発電を開発する事業者は、

①投資総額の最低20%を地域出資に(風車から直線距離で半径5km以内に居住する住民に10%+風車設置から5km以内に領土を持つ自治体に10%ずつ)提供しなければならないことが義務付けられています。また、市民出資の場合、一口は500ユーロ以下にすることが決められています。

 

②対象は高さが50m以上の風力発電

 

③そして資本参加の提供ではなく、代替案としては、

・自治体の同意があれば、風車設置から5km以内に該当する自治体が毎年一定額の支払い(この風力発電事業で得られる利益の10%)を受けることで免除されます。

・市民に投資参加を促さない場合は、該当する地域住民に対して貯蓄商品を提供することで免除されます。例えば、風力発電事業者は利益の10%を毎年適当な銀行に一旦預入します。その銀行は、該当する5km以内の市民がそこで定期預金を組む場合(310年で満期とする元本保証)、その利子を、毎年繰り入れられる風力発電からの利益で支払うことになりますので、かなりの利回りが期待できるという仕組みです(かつ、リスクが少ないので、投資に慣れていない市民も利用しやすい)。

http://www.regierung-mv.de/Landesregierung/em/Energie/Wind/B%C3%BCrger-und-Gemeindebeteiligungsgesetz

 

 

もちろん、風力発電事業者の所有権を侵害する可能性の高い法律ですが、同時に、これによって風力発電への地域住民の受容度が高まるなら、反対運動などにあって、計画が遅延したり、最悪中止になるようなリスクを低減させることができます。

 

===================

 

もう、こういうの日本でも即時に必要じゃないでしょうか?

 

日本では、乱暴な方々が全国各地ですでに暗躍していますから、あと5年もすると、(メガソーラーと同様に)国中が風車反対だらけになりそうです。

 

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2015年

7月

23日

ドイツのエネルギーシフトを日本に当てはめていたら?

ドイツでは2015年7月の現在でも、エネルギーヴェンデ(エネルギーシフト)は、進展を続けています。


当然、他の先進工業国でもこれだけのスケールで実施している前例がない戦略、政策であり、ドイツ国内にも様々なステークホルダーがいますから、問題がまったくなく、快調に邁進しているのか、と問われれば、直進する道ではなく、山あり谷ありの茨道で、走りながら考え、一時は停止し、またスタートし、ということで順風満帆ではありません。ただし、毎年、毎月、毎日、少なからずも定めた目標(2050年のビジョン)にだけは向かって少しづつでも進んでいる、進歩していると評価することがいえるでしょう。


日本では、これらについては一方で礼賛する勢力があり、他方でそれに対して反論する、というか全く評価しない勢力がありと、なかなか真実が伝わっていない様子であることは、私のような仕事をしていると、ダイレクトに感じます。


例えば、バブル気味だった太陽光発電の普及について、徐々にブレーキをかけておくべきだったのに、政治的にいろいろな関心で、その対応が遅れ、ドタバタし、結局は一旦仕切りなおしでストップさせなければならなくなったことを捉えて、「ドイツのエネルギーシフトは頓挫した(失敗した)」というような声を上げている人、団体も数多くありましたし、そうした事象にはできるだけ触れないで、進展の目覚ましいところだけをいいコト取りして、「ドイツは素晴らしい」と持ち上げる人、団体もあります。


当然、こうした前例がない試みは世界中からの関心を集めており、で、あればこそ、そこには様々な思惑、視点、立場、考えによって、様々な評価が下されるのは当然です。また、こうした大きな関心が集まる事柄に対して、一つの意見しか出ないのでは、健全でも何でもありません。


でもね、もうちょっとエネルギーシフトの全貌を知った上で、細々した事象について語ろうよ、という自分がいます。大切な「森」のほうについては情報共有や理解が進まないまま、日々の細々とした「木」のほうばかりに議論が集中しているような気になるんです。


ということで、今回、ドイツの各種のエネルギーシフトにおける目標値、そして現状と出発点を整理し、同時に、本筋の対策の意味、意義について、エネルギーフロー図、つまり一次エネルギー供給と最終エネルギー消費の観点から、何のためにそのような試みをしているのかわかりやすい形でレポートしてみよう、と思い立ちました。同時に、そのドイツでの本筋の取組みを、もし、日本のエネルギー供給、消費の状態に代入してみると、何が見えてくるのか? そんな試みをレポートの中では取りまとめて見ました。


基本的には、ドイツは2050年までに、一次エネ供給量を半減し、化石・原子力に頼らない社会をわずか3つの対策(電力の再エネ化、自動車交通のEV化、建物の高断熱化、高気密化)で実施することができますし、その方向で進展しています。日本に当てはめてみると、4つの対策(電力の再エネ化、自動車交通のEV化、建物の高断熱化、高気密化、そして給湯エネの省エネ化・再エネ化)が必要になることも明らかになりました。


15ページの計算式の多いレポートになってしまいましたが、使っている計算は足し算、掛け算のみです。


ご興味のある方は、多少の時間を投資して、レポートを読み解いていただければ幸いに思います。


※なお、このレポートは私の個人的な見解です。文中に使用しているエネルギーフロー図は、ドイツ経済・エネルギー省の「エネルギーデータ」、日本のエネ庁発行の「エネルギー白書」から出典を明示した形で掲載しています。


独日比較 エネルギーシフト
20150717 独日比較 エネルギーシフト 村上作成.pdf
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2014年

6月

30日

共著の出版『ドイツの市民エネルギー企業』

学芸出版社より、『100%再生可能! ドイツの市民エネルギー企業』が出版されました。

 

共著者:村上敦・池田憲昭・滝川薫(MIT Energy Vision GbR)
A5判・204頁・定価 本体2200円+税
2014年6月発売
ISBN978-4-7615-2573-6
=================================
ドイツの再生可能エネルギー増産を牽引するのは、地域に密着した企業活動。市民が起こしたエネルギー株式会社、エネルギー組合、自治体のエネルギー公社 等、代表的なビジネスモデルを現地のジャーナリストが紹介。エネルギーのしくみを変える社会とは?その実現に必要なことは?エネルギーヴェンデ(大転換) の最前線に探
る。

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共著『100%再生可能! 欧州のエネルギー自立地域(学芸出版)』の出版から2年。欧州のエネルギー自立、100%再生可能エネルギー地域を目指す「地域、自治体」をテーマに、事例や背景情報を取り上げた前著でしたが、今回は、エネルギー自立を目指す際、その原動力となっている市民エネルギー企業、市民エネルギー組合、自治体のエネルギー公社など、ドイツにおける再エネ推進の「ステークホルダー」をテーマに、その事例とその背景を本書では描きました。

 

1991年施行の〈電力供給法〉、2000年施行の〈再生可能エネルギー促進法(EEG法)〉というドイツにおける再エネ電力の買取制度(FIT制度)がはじまってからすでに10年以上。その間、再エネ設備を着実に設置するために投資を行ってきたのは、電力大手ではなく、とりわけ市民、農家、中小の地域の企業でした。それが地域経済における付加価値の創造につながり、価値の創造が行われていると理解した地域は、地域内のお金、投資によりさらなる投資を実施しています。

 

その過程で生み出された市民エネルギー企業や組合や、その過程における自治体公社や自治体の役割は、ドイツのエネルギーシフトを読み解く文脈ではどうしても理解したいもの。それに答える形の内容になっています。

 

日本でもFITがはじまり、太陽光発電の設置が急増していますが、大手資本や大企業の投資が目立ち、なかなか地域内のお金で投資される状況には至っていません。地域外からのお金で再エネを設置しても、地域の外にお金、経済価値はそのまま逃げてしまいます。

 

だからこそ、すでに実績があるドイツの事例は参考になります。人口減少の地域社会で、今、経済価値の創造を行うことのできる最大の対象がエネルギーです。このチャンスを日本全国の地方が活かすことを願ってやみません。

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2014年

3月

24日

訳書出版『メルケル首相への手紙 ドイツのエネルギー大転換を成功させよ』

世界最大の再生可能エネ施設のデベロッパーJUWI社の創業者マティアス・ヴィレンバッハー氏のベストセラー『メルケル首相への手紙~ドイツのエネルギー大転換を成功させよ』の出版日が確定いたしました。

クリスマス・プレゼントということで、12/24の発売です(Amazon)。
Neues Bild

本書では、ヴィレンバッハーがメルケル首相にアンモラル(?)な提案を行います。もし、これまでのように彼女が既存エネルギー大手の言いなりで既得権益確保 のためにエネルギーシフトを阻害し続けるのではなく、適性な枠組みを政治として形作り、エネルギーシフトを推進するなら、彼の所有するJUWI社の全株式 を提供するというディールです。

私はとくにドイツ・バンザイ主義ではありませんし、ドイツでもエネルギーシフトに対しては、当然、推進派 と懐疑派がいることは承知しています。またエネルギーシフトに対する抵抗勢力も大きなものがあります。しかし、手工業組合、農業関係者、さらに市民の大多 数は、エネルギーシフト推進側であることも現実として知っています。

現在未だに、秋の総選挙後の新政権の連立協議が終わっていませんが、 秋までの第二次メルケル政権(CDU/CSU+FDP)のエネルギー政策では、明らかに大企業へ利益を還元し、市民により大きな負担を強い、同時にエネル ギーシフトをなんとか押しとどめようとしていました。このへんのドイツの事情が、そのままに描かれている本書は、日本での議論に有益だと思い、本書の和 訳・出版をしようと決断しました。

本書の内容はおおまかに分けて以下の3つになります。

1.ヴィレンバッハーは大学生の ころ100万マルクをなんとか仲間と工面して最初の風車を建設します。そしてJUWI社の設立、その後の波瀾万丈の人生が続きます。彼の人生を通じて、再 生可能エネルギーのパイオニアがどのように最先端で考え、動き、対応しているのか、そしてその先に何が見えるのか、それをヴィレンバッハーが語ります。

2.ドイツのエネルギーシフトを取り巻く過去の経緯と現在の状況の分析について。

3.ドイツがエネルギーシフトできたとしたら、どのような形となっているのか、そのビジョンの提示とマスタープランの提案。

上記のどの部分についても、経営者で現実主義者である彼の論調は、学者やジャーナリストの視点とは異なり、なかなかこれまでにない、再生可能エネルギー関連 の著書だと思います。また、最先端の実践主義者の彼だからこそ提案する「洋上風力とスーパーグリッド、蓄電不要論」、同時に、既存の太陽光、陸上風力での 設備稼働率を倍増させる計画などについては、日本のこれまでの議論にはない新鮮なものです。

 

皆さん是非本書をお読みいただければと思います。

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